いつも自分を苦しめる心は、自分が正しいと思う心

いつも自分を苦しめる心は、自分が正しいと思う心とも言われます。

自戒の念を込めて、身につまされる話を紹介します。

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◇魚をとるのは、どこの猫でも同じ

 主人が帰宅した。妻が裏口で、棒を持って構えている。

「おまえ、そこで、なにしてる」

「あら、おかえり。私、いま腹がたってしかたがないの」

「いったい、どうしたんだ」

「今日ね。あなたの好きなハマチ、千五百円もだしてよ、買ったの。

それをマナ板の上においたとき、ご飯が炊きあがったので、

火を弱めて、ひょいと後ろを向いたらあなた、

アノ盗人猫めが、魚くわえて床下に逃げこむじゃないの。

いくら呼んでも、目を光らせて、うなってばかり。

私、くやしくて、くやしくて」

「よしよしわかった。

ところで一度、静かに考えてみようじゃないか。

猫は主人がハマチが好きで、千五百円も出して買ったと知っていただろうか」

「そんなこと、猫が、知るもんですか」

「では魚をとるのは、ウチの猫だけか」

「そりゃ、どこの猫でもとりますわよ」

「そんな猫に魚をとられる主婦は、賢いのか、ばかなのか。

もしこの事件を仏さまが裁判なされたら、

訴訟費用は原告の、おまえが持たねばなるまい」

「もういいわ。私、猫をたたきません」

「イヤ、たたけ、たたけ」

「でも、猫が悪くないもの」

「どちらが悪いか」

「私が悪かったのよ」

「それじゃ、お前の頭をたたいておけ」

猫が魚をとるのは開闢(かいびゃく)以来のことなのだ。

腹をたて苦しむのは、いつでも、己が正しいと思うのが原因である。

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